みなさんは、「呉服屋」と聞いて、どんなことをしているお店をイメージされますでしょうか?
残念ながら、いつの頃からか、着物を扱っている店を、幅広くひとくくりに「呉服屋」とくくられてしまった感があります。あるきものの振興団体の出す本ですら、呉服店とは、着物のセレクトショップといってしまっていますので、悲しいことです。
呉服問屋と呉服小売屋
京都では、昭和中期まで、問屋と小売屋は明確に違うものでした。問屋は、量産の既製着物を卸す呉服問屋、着物から小物までなんでもそろう総合問屋など、小売屋に卸す商いでした。消費者・エンドユーザーへ商品を売る小売屋は、既製品を集めて揃えたセレクトショップとしての呉服小売屋、そして、お客様の好みや着ていく機会を伺ってオーダーメイド/オートクチュールのきものをつくる「あつらえ呉服」の小売屋がありました。
着物の全盛期には、大変大きな市場でしたし、職人を含め細かくいうときりがないくらいの商いの形がありましたが、次第に和服があまり着られなくなり、市場が縮むと呉服業界全体が皆必死にあの手この手で売りはじめ、消費者の目からは、境目のわからない「呉服屋」になってしまったのだと思います。
でも、どのお店もルーツが違います。今となっては、京都の人でも、問屋、小売屋の違いを知らない人の方が多くなっていますので、全国の一般消費者・エンドユーザーには、わからないのも無理はありませんが、お店ごとに素地が違うものです。問屋は販売業ですから、売る側の意図や立場でお商売を考えられます。逆に、小売屋は、着る方の立場に立って、色々お手伝いする顧客サポート業でした。考える始点が違うのが、実は、一番大きいのではないかと思います。
残念ながら、呉服の小売屋は、他の業種の小売業と同様、時代と共に力を失い、次第に店を閉めていきました。良い顧客との良い関係を築けているあつらえ呉服の小売屋を除いては・・・。